・遺言書作成の重要性
人生の終末期において、遺言書は、ご自身の財産の分配や希望を法的に明確にするための、重要な手段と言われています。
遺言書がない場合、法定相続に従って財産が分配されますが、これは必ずしも皆様の希望に沿うとは限りません。
遺言書を作成することで、残されたご家族の遺産分割や精神的な負担を軽減し、相続での争いを防ぐことができる可能性が高まります。
実際、自筆証書遺言の保管制度の申請数は令和6年で約23,000件(法務省HPより)、公正証書遺言の作成件数は令和5年で約11万件(日本公証人連合会HPより)となっており、件数は年々少しずつですが増えています。
そこで今回は遺言書の種類とそれぞれのメリット、注意点などについてお伝えします。
・遺言書の種類
1. 自筆証書遺言
特徴: 遺言者が自分で全文を手書きする遺言書です。
メリット
・費用が安い
・いつでも手軽に作成できる
・内容を秘密にできる
デメリット
・形式不備で無効になる可能性がある
・紛失や改ざんのリスクがある
・家庭裁判所の検認が必要
2020年からは自筆証書遺言書の保管制度も始まっています。
この制度を利用することで、自筆証書遺言を安全に保管し、紛失や改ざんのリスクを減らすことができます。
1-1自筆証書遺言書保管制度の概要
保管場所: 全国の法務局(遺言書保管所)
保管対象: 自筆証書遺言(封がされていないもの)
申請者: 遺言者本人
費用: 1件3,900円
手続き: 遺言書を作成→保管申請書を作成→法務局に予約→法務局で申請→保管証を受け取る
自筆証書遺言書保管制度のメリット
・安全な保管: 法務局で厳重に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
・検認が不要: 家庭裁判所の検認が不要となり、相続手続きがスムーズに進みます。
・閲覧・交付: 遺言者の死後、相続人等が遺言書の閲覧や謄本の交付を請求できます。
自筆証書遺言書保管制度の注意点
・遺言書は封をしない: 封をした遺言書は保管できません。(法務局で遺言の内容をスキャンして画像情報を保存するためです)
・遺言書の内容が不備があっても受付けられる: 法務局では、遺言書の内容は確認しません。
2. 公正証書遺言
・特徴: 公証人に作成してもらう遺言書です。
法的な形式が整っており、確実性が高い点がメリットです。
メリット
・無効になるリスクが低い
・紛失や改ざんの心配がない
・検認が不要
デメリット
・費用がかかる
・作成に手間と時間がかかる
・内容を公証人に知られる
3. 秘密証書遺言
特徴:遺言書の内容を秘密にしたまま、その存在だけを公証役場で証明してもらう遺言書の形式です。
メリット
・内容を秘密にできる:遺言書を封筒に入れて提出するため、誰にも内容を知られずに済みます。
・紛失・改ざんのリスクを減らせる:公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
・遺言者の最終意思を尊重できる:遺言内容を秘密にしておくことで、遺言者の意思が尊重されやすくなります。
デメリット
・手続きが複雑:作成には厳格なルールがあり、手続きも煩雑です。
・費用がかかる:公正証書遺言と同様に、公証人への手数料がかかります。
・相続開始後の手続きが必要:相続開始後、家庭裁判所で検認という手続きが必要になります。
作成方法
・遺言書を作成する※1→遺言書を封筒に入れる ※2→公証役場へ行く※3→公証人の認証を受ける※4
※1遺言書は手書きでも、パソコンで作成しても構いません。ただし、遺言者の署名・押印は必須です。
※2封印した箇所に遺言者も押印します。
※3遺言者本人と証人2人が公証役場へ行きます。遺言書を提出し、遺言者のものであることを申述します。
※4公証人が遺言書の存在を証明する書類を作成します。 遺言者、証人、公証人が書類に署名・押印します。
注意点
・遺言書の内容は秘密ですが、存在は公証役場に記録されます。
・相続開始後、家庭裁判所での検認が必要です。
・遺言書の形式に不備があると、無効になる可能性があります。
秘密証書遺言書は、遺言内容を秘密にしたい場合に有効な手段ですが、手続きが複雑であるため、専門家(弁護士や司法書士など)に相談することをおすすめします。
・どの遺言書を選ぶべきか?
どの遺言書を選ぶべきかは、あなたの状況や希望によって異なります。
・費用を抑えたい、手軽に作成したい、早く作成したい場合は: 自筆証書遺言
・確実性を重視したい場合は: 公正証書遺言
・内容を秘密にしたい場合は: 秘密証書遺言
・まとめ
高齢化に伴い相続人の認知の問題遺言書は、あなたの財産や希望を法的に実現するための重要な手段です。それぞれの遺言書の特徴を理解し、あなたに合った遺言書を作成しましょう。