コラム
column
2025.05.22

財産債務調書の提出期限が近づいています!

1. はじめに

国税庁の統計資料によると相続税の申告をした方のうち被相続人の財産が3億円以上の方は約6.8%となっています。

相続税の申告件数自体も近年増えてきており、国税庁は適正・公平な課税の推進のために情報収集の強化を行っています。

今回はその中で活用されている財産債務調書についてお話したいと思います。

2. 財産債務調書とはその目的と法的根拠

財産債務調書とは、所得税法に基づき、一定の所得金額と財産額を有する納税者が、その年の12月31日時点における財産の種類、数量、価額、所在、債務の金額などを税務署に報告する書類です。

①その主な目的は以下の通りです。

適正な課税の確保: 高額な所得や財産を有する納税者の財産状況を把握することで、適正な所得税や相続税の課税に繋げます。

税務調査の効率化: 事前に財産や債務の状況を把握しておくことで、税務調査を効率的に行うことができます。

納税者の自主的な申告の促進: 財産状況を明らかにする意識を持ってもらうことで、納税者の自主的な申告を促します。

法的根拠: 所得税法第232条の2に、財産債務調書の提出義務に関する規定があります。

②誰が提出する必要があるのか提出義務の判定基準

すべての納税者に財産債務調書の提出義務があるわけではありません。

提出が必要となるのは、以下のいずれかの要件に該当する方です。

イ.その年の所得金額の合計額が2,000万円を超える方その年の12月31日において、以下の財産の合計額が3億円以上の方 

ロ.その年の12月31日において以下の財産の合計額が10億円以上の方(上記イに該当する方を除く)

預貯金 (当座預金・普通預金・定期預金等)

有価証券(株式、投資信託など)

不動産(土地、建物など)

貴金属、書画、骨とう品(1点または1組の価額が10万円を超えるもの)など

上記のいずれかの要件を満たす場合、原則として翌年の6月30日までに財産債務調書を所轄税務署に提出する必要があります。

③何を記載するのか?記載すべき財産と債務の範囲

財産債務調書には、その年の12月31日時点における、ご自身のすべての財産と債務を記載する必要があります。

主な記載事項は以下の通りです。

記載すべき財産:

預貯金: 金融機関名、残高などを記載します。

有価証券: 銘柄、数量、時価などを記載します。

不動産: 所在地、種類、時価などを記載します。

貴金属、書画、骨とう品: 種類、時価などを記載します(1点または1組の価額が10万円を超えるもの)。

その他: 生命保険の解約返戻金、貸付金、未収入金、ゴルフ会員権など、金銭に見積もることができる財産は原則として記載が必要です。

記載すべき債務:

借入金: 金融機関名、残高などを記載します(住宅ローン、事業資金など)。

未払金: 買掛金、未払費用など、支払いが完了していない債務を記載します。

記載する価額について:

原則として、財産のその年の12月31日時点における時価または見積価額を記載する必要があります。

時価の評価方法については、不動産であれば路線価や固定資産税評価額、有価証券であれば取引残高報告書などを参考にします。

④どのように作成・提出するのか作成のポイントと提出方法

財産債務調書の作成は、記載項目が多く、評価が必要な財産もあるため、手間と時間を要する場合があります。

スムーズに作成するためのポイントは以下の通りです。

作成のポイント:

早めの準備: 年末が近づいてから慌てて準備するのではなく、日頃から財産や債務に関する資料を整理しておくことが大切です。

正確な情報の収集: 金融機関の残高証明書、不動産の登記簿謄本、有価証券の取引報告書など、正確な情報を基に記載するように心がけましょう。

提出方法:

財産債務調書の提出方法は、e-Taxによるオンライン提出郵送による提出税務署の窓口での提出のいずれかを選択できます。

⑤提出しなかった場合、または不正確な記載があった場合のペナルティ

財産債務調書を期限内に提出しなかった場合、または記載内容に不備や虚偽があった場合には、以下のペナルティが課される可能性があります。

過少申告加算税等の軽減措置の不適用: 所得税や相続税の税務調査において、申告漏れなどが発見された場合、財産債務調書を提出期限内に提出していれば過少申告加算税または無申告加算税が5%軽減される措置がありますが、財産債務調書を提出していない場合、この軽減措置が適用されません。

・過少申告加算税等の加重措置:財産債務調書の提出がない場合にその財産または債務に関して所得税の申告漏れが生じたときはその財産または債務に係る過少申告加算税等が5%加重されます。

これらのペナルティを避けるためにも、財産債務調書の提出義務がある方は、正確な情報を基に、期限内に提出することが重要です。

3.まとめ

財産債務調書は、一定の所得や財産を有する納税者にとって、適正な納税義務を果たすための重要な書類です。

提出しなかった場合には、不利益を被る場合がありますので必ず期限内に提出するようにしましょう。

CONTACT

無料相談はこちら

クリニックに強い税理士なので、
医療特有の制度や税務を考慮した提案が可能です。

  • 経営相談
  • 事業承継
  • 相続対策

無料相談はこちら

クリニックの経営相談、相続対策、事業承継ならお任せください。

クレド税理士事務所

〒532-0011

大阪府大阪市淀川区西中島5丁目9−5 NLC新大阪ビル7階