コラム
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2025.11.27

相続財産からふるさと納税をした場合の税金について

 はじめに

相続が発生した際、相続人が被相続人から引き継いだ財産をどのように活用するかは、重要な判断事項となります。

近年、相続財産の一部をふるさと納税に充てるケースがみられます。

本コラムでは、相続財産からふるさと納税を行った場合の税金の取り扱いについて、詳しく解説いたします。

 相続財産とふるさと納税の基本的な関係

 相続財産の性質

相続財産は、被相続人の死亡により相続人に承継される財産です。

相続人は、相続開始時点で被相続人の権利義務を包括的に承継することになります。

相続財産には、現金・預金、不動産、有価証券などが含まれ、これらは相続税の課税対象となります。

ふるさと納税制度の概要

ふるさと納税は、地方自治体への寄附金制度であり、寄附を行った個人は所得税と住民税から一定額の控除を受けることができます。

寄附金額から2,000円を差し引いた金額が、原則として税金から控除される仕組みとなっています。

相続財産からふるさと納税を行う場合の税務上の取り扱い

 相続人がふるさと納税を行う場合

相続財産を取得した相続人が、その財産を原資としてふるさと納税を行う場合、この寄附は相続人自身の行為として扱われます。

したがって、通常のふるさと納税と同様に、相続人の所得税・住民税から控除を受けることができます。

 税額控除の計算

相続人が相続財産からふるさと納税を行った場合、以下の計算式により控除額が算出されます。

– 所得税からの控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率×1.021」

– 住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%

– 住民税からの控除額(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税の税率×1.021)

ただし、控除額には上限があり、住民税所得割額の2割が限度となります。

 相続税との関係

相続財産からふるさと納税を行うと、相続税の節税になる場合があります。

ふるさと納税は「地方公共団体への寄附金」であるため、相続税の計算上「寄附金控除」が適用され、その寄附額は非課税となります。

そのため課税財産を減らすことができ、相続税を減少させることができます。

ただ、ふるさと納税として寄附するものは現金となるため、手元に残るお金が少なくなることとなります。

しかしながらふるさと納税は所得税・住民税の還付・控除も受けられますし、返戻品も受け取ることができます。

納税資金等を確保して、適切に利用すれば有効な節税対策として利用可能です。

寄附金控除の要件

ふるさと納税した財産について、相続税の寄附金控除の適用を受けるための要件は以下の通りです。

・寄附した財産は相続や遺贈によって取得した財産であること

寄附金控除の対象となるのは相続税で取得した財産の寄附に限定されています。

不動産等を売却して得た金銭等を寄附しても寄附金控除の対象にはなりません。

・その取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること

相続税の申告期限までに遺産分割協議を完了させて、相続等により取得した財産を寄附する必要があります。

・地方自治体から交付された「寄附金受領証明書」を相続税の申告書に添付して提出すること

 相続財産からふるさと納税を行う際の注意点

 タイミングの考慮

相続財産からふるさと納税を行う場合、遺産分割が確定してから実施することになります。

申告期限を過ぎてから分割協議が完了し、その後ふるさと納税を行っても相続税の寄附金控除の対象外となってしまいますのでご注意下さい。

 控除限度額の把握

相続人の所得状況によって、ふるさと納税の控除限度額は異なります。

相続財産が多額であっても、相続人自身の所得が少ない場合、控除を受けられる金額には限りがあります。

事前に控除限度額を計算し、効果的な寄附額を設定することが重要です。

またふるさと納税を行ったことにより相続税が0になったとしても申告自体は必要です。

実務上の具体的な手続き

 寄附の実施方法

相続財産からふるさと納税を行う場合でも、手続き自体は通常のふるさと納税と変わりません。

相続人名義で自治体に寄附を行い、寄附金受領証明書を受け取ります。

 確定申告での手続き

ふるさと納税を行った相続人は、翌年の確定申告において寄附金控除を申請します。

確定申告書に寄附金受領証明書を添付し、寄附金控除額を計算して記載します。

ワンストップ特例制度を利用する場合は、寄附先の自治体が5団体以内であることが条件となりますが、相続財産からの寄附であっても、この制度を利用することは可能です。

 まとめ

相続財産からふるさと納税を行うことは、相続税の税額を減少させ、かつ相続人の所得税・住民税を減少させるという税制上のメリットを享受しながら、地域社会への貢献も果たせる有効な方法です。

ただし、寄附のタイミングや寄附額をいくらにするかなど検討すべき点もあります。

相続が発生した際には、遺産分割や相続税の申告など、対処すべき事項が多岐にわたります。

相続財産からふるさと納税を検討される場合は、税理士などの専門家に相談し、総合的な税務プランニングの中で最適な方法を選択されることをお勧めいたします。

適切な知識と計画的な実行により、相続財産を有効に活用し、税務上のメリットを最大限に享受することができるでしょう。

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