はじめに
国税庁は毎年7月1日に、相続税・贈与税の土地評価に用いる「路線価」を公表します。
今年も去る7月1日に令和8年の路線価が発表されました。
令和8年分の路線価は、令和8年1月1日時点の地価を基準として算定されており、同年3月に国土交通省が公表した公示地価の約80%を目安として設定される仕組みとなっています。
令和8年の公示地価が全用途で+2.8%上昇したこともあり、令和8年の路線価も全国平均で前年比+2.9%と、5年連続のプラスとなりました。
全国トップは東京の+9.4%で、日本で最も高い土地は銀座の鳩居堂前で5,336万円/㎡、前年比+11%で41年連続で全国トップとなりました。
また47都道府県の県庁所在地の最高路線価で下落した都市がゼロとなり、バブル期の1991年以来35年ぶりの快挙となりました。
近畿圏に目を向けると、路線価が一番高くなったのは阪急うめだ本店前の2,120万円/㎡で、前年比+1.5%となりました。
また兵庫県でも21地点中15地点で上昇し、+2.4%と平成22年以降では最高となりました。
県内の最高は三宮センター街の640万円/㎡で4年連続の上昇となっております。
近畿圏の特徴的な動向
近畿圏の各都市の最高路線価についてはいずれも上昇しており、その中でも今回は近鉄奈良駅前の路線価が前年比+12.6%と近畿圏内で最高の伸び率となっており、地方都市でも主要駅周辺や観光動線にあたるエリアは需要が高いことがわかります。
インバウンドと再開発が牽引する構造的強さ
近畿圏、とりわけ大阪の地価が強い理由には、以下のような複合的な要因があります。
– インバウンド需要の継続的拡大:訪日外国人の消費額が前年同期比+10.3%増加しており、ホテル・商業地への需要が高水準を維持
– 万博・IR(統合型リゾート)への期待:大阪・夢洲エリアを中心とした再開発期待が地価を下支え
– 人口流入と職住近接ニーズ:大阪市内への人口流入が続き、賃貸・売買市場の双方を押し上げ
– 新築供給の極端な不足:建築費高騰・人件費上昇により新規供給が絞られ、需給がタイトな状況が継続
これらの要因が重なることで、大阪の不動産市場は「供給不足 × インバウンド × 再開発 × IR効果」という複数の上昇エンジンが同時に作動している構造となっており、他都市と比較しても地価が下落しにくい状況となっています。
令和8年路線価への影響と税務上の留意点
路線価の上昇が相続税・贈与税に与える影響
相続・贈与に関わる土地評価額の変動は、納税額に直接影響を及ぼすため、今年の路線価の動向を正確に把握しておくことが非常に重要です。
近畿圏においては、大阪市中心部(北区・中央区・西区・浪速区など)の商業地に土地を所有されている方は、相続税評価額が大幅に上昇する可能性があります。
住宅地においても上昇傾向にあることから、評価額の見直しが必要なケースが生じてきます。
具体的に路線価が上昇すると、以下のような場面で影響が出てきます。
– 相続税の申告:被相続人が所有していた土地の評価額が上昇することにより、相続税の課税対象財産が増加し、納税額が増える可能性がある
– 贈与税の申告:生前贈与を活用した相続対策において、土地を贈与する際の評価額が上昇するため、贈与税の負担が増加する場合がある
– 相続税の生前対策の見直し:路線価の継続的な上昇を踏まえ、現在実施中または検討中の相続対策(小規模宅地等の特例の活用、贈与計画の見直し等)を再検討する必要がある
小規模宅地等の特例への影響
居住用・事業用の宅地については「小規模宅地等の特例」により評価減が受けられますが、その前提となる路線価ベースの評価額自体が上昇することで、特例適用後の評価額も上昇することになります。
特に大阪市内の商業地・住宅地については、この点に注意が必要です。
評価額の見直しタイミング
路線価は毎年変動するため、数年前に行った相続税の試算や対策プランが、現在の地価水準では実態と乖離している場合があります。
特に継続的かつ大幅な上昇が見られるエリアにおいては、定期的な評価額の見直しを行うことが不可欠です。
今後の見通しとご注意点
相続・贈与を検討されているお客様におかれましては、路線価の上昇傾向を踏まえた資産評価の見直しや、生前対策の再点検を早めに行われることをお勧めします。