はじめに
去る9月15日に令和8年(2026年)の基準地価(正式名称:都道府県地価調査)が公表されました。
「基準地価」は、全国の土地取引や相続税・固定資産税の評価における重要な指標のひとつです。
本コラムでは、基準地価の概要や公示価格との違いを整理したうえで、近年の関西圏における地価動向と、税務・不動産取引における実務上の留意点についてご説明します。
1. 基準地価とは何か
基準地価とは、国土利用計画法第24条の2に基づき、各都道府県が毎年7月1日を基準日として調査・公表する「標準価格」のことです。
不動産鑑定士が各標準地の価格を評定し、都道府県知事が公表するという流れで実施されます。
その目的は、一般の土地取引の指標を提供するとともに、公共用地の取得価格の算定や、各種税務評価の参考とすることにあります。
全国で約21,000地点以上の標準地が設定されており、都市部だけでなく農業地域や林業地域も調査対象に含まれるのが特徴です。
2. 公示価格との違い
「公示価格」と「基準地価」はどちらも「土地の価格」を示す公的指標ですが、いくつかの重要な違いがあります。以下の表にまとめます。
|
項目 |
公示価格 | 基準地価(都道府県地価調査) |
| 根拠法令 | 地価公示法 | 国土利用計画法 |
| 実施主体 | 国(国土交通省) | 都道府県 |
| 基準日 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 |
| 公表時期 | 毎年3月下旬 | 毎年9月下旬 |
| 調査地点数 | 約26,000地点 | 約21,000地点 |
| 調査区域 | 都市計画区域が中心 | 都市計画区域外も含む |
| 鑑定評価者 | 不動産鑑定士2名以上 | 不動産鑑定士1名以上 |
この表からもわかるように、公示価格は「1月1日時点」、基準地価は「7月1日時点」の評価であるため、半年ずれた形で市場の動向を確認できるという点が実務上の大きなメリットです。
特に地価が大きく変動している時期には、基準地価によって最新の価格トレンドを把握することができます。
また、税務上の評価との関係についても整理が必要です。
相続税評価(路線価)は公示価格の約80%、固定資産税評価額は公示価格の約70%を目安として設定されています。
基準地価そのものが直接これらの税務評価額に使われるわけではありませんが、路線価や固定資産税評価額の根拠となる公示価格と連動しているため、地価の上昇局面では将来の税負担増加を予測する材料として活用することができます。
3. 令和8年の関西圏における地価動向
(1)兵庫県・大阪府・京都府の概況
令和7年・令和8年の基準地価において、関西圏は全国的にも注目される上昇トレンドが続いています。
兵庫県内の基準地価(692地点)は、住宅地の平均変動率が県全体でプラス1.4%で4年連続、商業地もプラス3.2%で5年連続の上昇となっています。
特に神戸市や阪神間で上昇がみられます。
住宅地の県内最高価格は芦屋市大原町で1平方メートルあたり80万5,000円、商業地では神戸市中央区三宮で1平方メートルあたり845万円となりました。
大阪府、京都府においても住宅地、商業地の平均価格はいずれも前年比プラスとなっています。
これらの要因となっているのが主にインバウンド需要の回復です。
コロナ禍からの回復に伴い、訪日外国人数が急増しています。
神戸・大阪・京都のいずれにおいても、ホテルや商業施設の需要が高まり、商業地の地価は顕著な上昇を見せています。
4. 税務・相続・不動産取引における実務上の留意点
基準地価や公示価格の動向は、税理士業務においても直接的な影響があります。
① 相続税申告における土地評価
地価の上昇局面では、路線価も翌年に反映されるため、相続税評価額が上昇します。
特に不動産を多く保有している方については、相続税の負担増加が見込まれます。
生前贈与や不動産の活用(賃貸・法人化等)を含めた早期の相続対策の検討をお勧めします。
② 不動産譲渡における適正価格の把握
親族間売買や同族会社への不動産売却においては、時価と乖離した価格で取引を行うと、みなし贈与や法人税上の問題が生じるリスクがあります。
基準地価・公示価格を参考に、適正な取引価格を設定することが重要です。
③ 固定資産税評価額の見直しへの備え
固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われます。
地価上昇が継続している場合、次回評価替え(令和9年度予定)において固定資産税・都市計画税の負担が増加する可能性があります。
保有不動産のコスト管理という観点からも注視が必要です。
おわりに
土地の価格は相続・贈与・譲渡・保有コストなど、様々な場面で税務に直結します。地価の動向を定期的にチェックしながら、早めの対策を講じることが大切です。