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2026.09.30

非上場株式の評価方法が大きく変わる? 国税庁「有識者会議」の最新動向を解説

 はじめに

2026年9月、国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)」を開催しました。

この会議では、現行の非上場株式の評価制度を抜本的に見直すための具体的な論点が議論されています。

中小企業オーナーや事業承継を検討されている方にとって、非上場株式の評価額は相続税・贈与税に直結する極めて重要なテーマです。

本コラムでは、9月に行われた有識者会議の概要をわかりやすくお伝えします。

 1. なぜ評価方法を見直すのか?

現行制度には、主に次の2つの問題点が指摘されています。

1. 規模による不公平:現行の類似業種比準方式は、規模の大きな会社ほど評価額が相対的に安くなる仕組みになっており、異なる規模の会社の株式を取得した者の間で相対的不公平が生じています。
2. 理論的根拠の乏しさ:類似業種比準方式は、他の分野では徐々に使われなくなっており、理論的・実証的な裏付けに乏しいという批判があります。

これらの問題を解消するため、学術的・理論的根拠を持つ「残余利益モデル」をベースに、税務上の評価として使いやすい形に修正した新たな評価方式への転換が検討されています。

 2. 「残余利益方式」とはどんな方法か?

残余利益方式とは、企業の価値を「現在の純資産」と「将来生み出す超過利益(残余利益)の現在価値」の合計として評価する方法です。

残余利益とは、会社が稼いだ利益から「株主が期待する最低限の利益(純資産×還元率)」を差し引いた超過利益のことです。

つまり、株主の期待を上回る利益を生み出している会社ほど、評価が高くなります。

 計算の基本的な仕組み

– 直前期末の純資産価額をベースにする
– 過去5年間の平均利益・平均配当を使って「将来5期分の残余利益」を計算する
– 各期の残余利益を「還元率(株主が期待する収益率)」で現在価値に割り引く
– 合計した金額に「しんしゃく率(割引率)」を乗じる

会議では、加算期間を5年とすることが妥当との方向性が示されています。

これは、上場企業の中期経営計画が一般的に3~5年であることを参考にしたものです。

また、将来利益の予測は恣意性を排除するため、課税時期前5年の法人の正常利益から算出することが提案されています。

 実際の評価水準への影響

試算によると(対象1,378社、還元率8%、加算期間5年の場合)、しんしゃく率を0.8に設定したとき、現行の評価額と比較して以下のような結果が出ています。

– 大会社:現行より評価額は上昇するものの、純資産価額比では現行の小会社の評価水準(純資産価額比63.8)に概ね同程度
– 小会社:約67.9%の会社で現行評価額を下回る

つまり、収益力の低い中小企業(特に小会社)では評価額が下がるケースが多く、収益力の高い大会社では評価額が上がる可能性があります。

 3. 残余利益方式の主な個別論点

会議では、残余利益方式を実際に税務上適用するにあたり、以下のような個別の論点が検討されました。

① 使用する帳簿について

中小企業が適用する会計基準には「企業会計基準」「中小会計指針」「中小会計要領」「法人税法」など複数あります。

会計基準の違いにより、同一の事象でも利益や純資産の金額に差が生じます。

そこで、課税の公平性の観点から、すべての企業が共通で作成する「法人税申告書(法人税法に基づく会計帳簿)」をベースに株価算定を行う方向性が示されています。

 ② 含み損資産がある場合の減損処理

残余利益方式では「直前期末の簿価純資産」をベースにするため、資産に多額の含み損(簿価>時価)がある場合、評価額が過大になるおそれがあります。

対応策として、以下の2つの要件を満たす場合に減損を反映させる方向が検討されています。
– 減損の判定:一般に公正妥当と認められる会計基準に照らし、決算公告等により明らかにしていること
– 減損の金額:資産の簿価が相続税評価額を上回る部分に限ること

 ③ 利益操作への対応

残余利益方式では過去の利益実績をベースにするため、利益を意図的に圧縮する行為への対応が必要です。

具体的には次の2つが問題となります。

– オペレーティングリース:リース期間中は損失(減価償却費)が収益(リース収入)を上回ることで評価額が大幅に圧縮される。→ オペレーティングリースがなかったものとして正常利益を算定する方向
– 役員報酬・役員退職金等:親族役員への過大な役員報酬や評価直前の多額の役員退職金の支払いにより、利益を人為的に圧縮するケースへの対応として、これらを正常利益に加算して評価することが検討されています。

 ④ 子会社株式の修正範囲

グループ法人税制を活用して税負担なく資産を子会社へ移転し、評価額を圧縮するスキームへの対応として、完全支配関係にある子会社株式については、簿価ではなく適正な価額に修正して親会社の評価額へ反映することが提案されています。

⑤ 従業員持株会の株式評価

非上場の中小企業で従業員持株会を設置しているケースにおいて、固定価格(1株○○円)による取得・精算が行われる場合、税務上の評価額との乖離が問題となることがあります。

一定の要件を満たす場合には、固定価格による評価を認める方向が示されています。

 4. 「特定の評価会社」の取り扱い

残余利益方式は「継続企業」を前提とした評価方法です。

そのため、残余利益方式によらず純資産価額方式で評価することが妥当な「特定の評価会社」が次のように整理されています。

類型 会社の例
株式価値の大半が保有資産 資産管理会社(資産保有特定会社)
残余利益方式の適用が技術上困難 組織再編直後の会社、開業後5年未満の会社、開業前の会社
継続企業の前提に疑義がある 休業中の会社
継続企業の前提を欠いている 清算中の会社

特に資産管理会社(資産保有特定会社)については、判定基準を現行の「土地・株式の保有割合」から、事業承継税制と整合した「特定資産の帳簿価額合計÷総資産の帳簿価額」で判定する方向が検討されています。

判定を簿価ベースで行うことで、納税者の事務負担を大幅に軽減することも提案されています。

 まとめ

今回の有識者会議の議論を整理すると、非上場株式の評価制度は以下の方向に大きく変わろうとしています。

– 原則的評価方法:現行の類似業種比準方式→「残余利益方式」へ転換
– 計算ベース:法人税申告書(法人税法上の数値)を使用
– 予測期間:過去5年の正常利益をベースに5年分の残余利益を加算
– 利益操作対策:オペレーティングリース・役員報酬等について正常利益に修正
– 特定の評価会社:資産管理会社等は引き続き純資産価額方式で評価

この改正は、相続税・贈与税における非上場株式の評価に直接影響するため、特にオーナー経営者・事業承継を検討中の方にとって非常に重要な制度変更です。

評価額が上がる会社・下がる会社それぞれあるため、早めに自社の状況を把握しておくことが大切です。

今後の制度改正の動向については、引き続き情報をお届けしてまいります。

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