はじめに
相続時精算課税制度は、贈与時に軽い税負担で財産を移転し、相続時に贈与財産を相続財産に加算して精算する制度です。
2024年(令和6年)1月から年110万円の基礎控除が創設され、利用を検討する方が増えました。
その際に、「届出は済んでいるはずだが、本当に受理されているのか分からない」「過去に選択したかどうか記憶が曖昧」という相談を受けることが少なくありません。
このたび国税庁が令和8年9月24日にe-Taxのマイページに新たな機能として「更正・決定の通知情報」「相続時精算課税適用状況」「書面申告提出状況」が追加されると発表しました。
これらについては令和8年10月19日以降にマイページに反映されるとしています。
本コラムでは、e-Taxを使った届出内容の確認方法を、書面中心だった過去の運用と比較しながら解説します。
1. 相続時精算課税の届出の基本
届出の仕組み
相続時精算課税制度を選択する場合、贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日の間に、次の書類を贈与税の申告書に添付して税務署へ提出します。
– 相続時精算課税選択届出書
– 受贈者の戸籍謄本または抄本(贈与者との関係・年齢を確認できるもの)
重要な注意点
– 一度選択すると撤回できません。 同じ贈与者からの贈与は、以後すべて精算課税が適用されます。
– 2024年以降、110万円以下の贈与であっても、初年度に届出が必要です。
ただし、基礎控除額以下であれば贈与税の申告自体は不要です。
– 届出書の提出自体が選択の意思表示となるため、提出の有無と受理状況の確認は重要です。
2. 過去(書面中心の時代)の確認方法
税務署への問い合わせが中心だった
かつては、届出の受理状況を確認する手段が限られていました。
| 確認方法 | 内容 | 課題 |
| 控えの保管 | 提出時に受付印のある控えを保管 | 紛失すると確認が困難 |
| 税務署への電話・窓口照会 | 本人確認のうえ口頭で回答を受ける | 時間がかかり、平日日中のみ |
| 開示請求 | 保有個人情報の開示請求手続 | 手続が煩雑で時間を要する |
過去に起きていた問題
– 贈与者・受贈者の双方が、数十年前に提出した届出の有無を覚えていない
– 親の死亡後に相続人が初めて精算課税の適用を知り、相続税の申告で想定外の加算が生じる
– 書類の紛失により、精算課税の選択有無が不明のまま相続税申告の準備が滞る
特に精算課税は「贈与から相続まで長期間が空く」制度のため、情報の散逸が起こりやすいという構造的な課題がありました。
3. 今後のe-Taxによる確認方法
e-Taxで確認できること
贈与税関係情報に以下が追加されます。
申告書表示(令和7年1月追加)
提出した贈与税の申告情報が受付番号順に表示されます。
※書面申告については令和8年分から表示可能となります。
更正・決定の通知情報(令和8年9月追加)
贈与税の更正通知書・決定通知書に係る情報が表示されます。
相続時精算課税適用状況(令和8年9月追加)
相続時精算課税制度を適用している場合に、特定贈与者氏名及び適用開始年分が表示されます。
特定贈与者を選択すると、これまでに申告した内容(申告年分・財産の価額の合計額・相続時精算課税分の贈与税額等)を申告年分ごとに確認できます。
書面申告提出状況(令和8年9月追加)
令和8年9月時点では過去7年分の提出記録が確認できます。
※委任関係登録を行った税理士も納税者のマイページ情報を参照できるようになりますので過去の申告等の確認がスムーズにすすみます。
おわりに
相続時精算課税の届出は、一度選択すると撤回できない重要な手続です。
だからこそ、「選択したかどうか」「いつ、どのように提出したか」を正確に把握しておくことが欠かせません。
しかしながら平均寿命も延びてきている今、贈与から相続までかなりの時間を要し、それらを正確に把握しておくことが難しい状況となっていました。
かつては紙の控えと記憶に頼るしかありませんでしたが、今回のe-Taxの機能拡充により、提出履歴をオンラインで確認し、データとして保存できる環境が整ってきました。
相続対策を検討されている方はこの機能を使って相続時精算課税の適用状況を確認の上、対策をすすめていきましょう。